2008年10月20日月曜日

楽器との再会

当然だけど、ピアノを弾く人は、自分の楽器を持ち歩くことがない。
勿論例外はあるが、少なくとも素人では、ない。

身一つでブリュッセルに来て、そんなわけで、一ヶ月以上ピアノを弾かなかった。
探してはいたのだけど学生の本分が邪魔をしていて、史上最長記録を作ってしまった。
遂に、ピアノを習いたいという女の子がいる一家に巡り会った。訪れたら、ちゃんとピアノがあった。
一般にピアノと言っても、「スタインウェイ」から「鍵盤ハーモニカ」まで人によって定義は様々なので、あるよ、と言われても実際に弾くまで予断を許さない。
アップライトの中でも、小型なもので、僕も自分の部屋があったら置いておきたいサイズ。部屋が広かったので、ピアノはより小振りに見えたのだけれども。

その子は、ピアノを習ったことがないそうだけど、好きで自分で弾いていたのだそうで、飲み込みも早く、30分で一曲譜読みをこなすことができた。

ピアノを弾くことは、学芸員や、噺家の仕事に近いと思っている。
その曲の美しさを、どう伝えるか。伝える側は、心底から作品に惚れ込むこと。
音が間違っているとか、技術が足りないとかではなく、どう弾いたら聞いた人に楽しんでもらえるか、そうやって僕は教わった。それは素人にはとてもありがたいことです。

教わったものを教えようなどと大それたことはできないけど、願わくばその子が、少しでもピアノを好きになり、音楽を楽しめるように、背中を押せたらと思う。

レッスンが楽しみでしょうがない。

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