2011年7月14日木曜日

クレー

東京国立近代美術館でやっているクレー展を見た。


むかしから美術館はわりと好きな方で、ちょっと気取ったおばちゃんたちの会話を盗み聞きしてみたり、趣味の良さそうな若い美人に見とれたりするために頻繁に通っていたのだけれど、ここのところ行かなかった。

久しぶりに行って、美術館に何を求めたか反省してみた。
だいたい美術館に行くと、胃腸のことを考えたり、無精髭の剃り残しを爪で引き抜いたりしている。
あとで、一緒に見に行った人に「あの絵がどうこうだった」と言われても、何も覚えていないことが多い。

それでもなお、足を運ぶのは、なぜか。

無責任でいられるところじゃないかと思った。
というのは、たとえば僕がクレーをボロクソに言いたいとして、こんなのは子どもの落書きだ、とか、ののしってみたとして、クレーの絵に対する社会の評価をこれぽっちも損じない。
定評に対する安心感もしくは判断からの開放と名付けてみたい。

例えば、クレーは「色彩の画家」だそうである。
最近習ったところでは墨の色にも五彩あるそうだし、色彩と疎遠な画家がいるのかしらんとか思うが、特に「色彩の画家」度合いが強いものだと納得したい。

しかしながら会場には彩色前のスケッチか、くすんだ色ばかり並んでいる。
鑑賞中の熟年紳士が、「どこが色彩の画家なんだ」と隣の奥さんにつぶやいていたけれど、そう思ってもいい受け手の自由度が、美術館の魅力かもしれない。

もう一つ言えば、企画展より常設展の方が落ち着く。
良く知らないけど、企画展は何かの趣旨がある。
今回のクレー展なら「おわらないアトリエ」で、製作過程が分かるのかも知れないけれど、なんか新しいことを知りたい、と思うのはどちらかと言えば熱心な向学心のある人に限られることで、展示の順序に沿うのは本を読むと同じ努力が必要になる。
ただちょっといい絵が飾ってあってぼーっと眺めるだけ、という時間もわるくないように思う。
東京近代美術館の所蔵品の展示にもクレーが何枚か飾ってあるみたいで、椅子に腰掛けて眺めることができるのも嬉しい。

二週間くらい前に見に行って、わざわざ後から書くようなことでもないんだけど、ひとり言なので害はないと思う。

2 件のコメント:

たかち さんのコメント...

私も昨年末、わざわざ横浜美術館までドガ展を見に行った結果、常設展の日本画に見とれて帰ってきたりしたなぁ

toyobe1984 さんのコメント...

なんかこう、ぎらぎらしてない感じがいいんじゃないかな。「いつもここにいまっせ」みたいな絵が。
企画展って混むもんね。