2011年3月2日水曜日

「10宅論」

世の「建築家」にはそれぞれ、デザインのモチーフのようなものがあって、安藤忠雄なら打放しコンクリートだし、黒川紀章なら三角錐だろうし、妹島和世ならのっぺりした白い空間、ということに落ち着くんじゃないかと思う。
素人目には、使い回しじゃないかと思うんだけれど、おそらく、建築家の人たちは意図的に、この「またかよ」を楽しんでいるはず。



それで、この本は、隈研吾という建築家の人が書いている。
隈研吾は、シマシマが好きな人だと言って間違いない。
設計する建物は一様にシマシマがついている。

このシマシマを、同級生は「隈印」と呼んでいた。
その同級生によれば、「所員ががんばって設計した建物に、隈印(シマシマ)をつけただけじゃん」ということだけれど、今になって思うには、所員が働くのは当たり前で、ボスの努力はもっと孤独なものであると想像する。

それはまあとにかく、材木とかなんかそういう長細いものを、良く分からないけれど綺麗にばらばらに並べているのが「隈印」だろうと思っている。
勿論、風が吹いて飛んだりはしないと思う。


本の中身は、題名通り、住宅の本である。
住宅の住まい方を通じて、各年齢層の人々の暮らしぶりや嗜好までが観察されている。

おおざっぱに言って、建築家の文章の胡散臭さは、勢いと説得力にあるんじゃないか。
「本当にそうかなあ」と考えるいとまを与えない。
疑うひまがないので、あとから、本当だっただろうかと思う。

この本も、前書きから、思想史の偉人たちの業績をバランス良く散りばめて、しかも分かりやすく簡潔に書かれている。
興味をそそるし、しかも流れるように展開して行く。
だまされやすい性格なので、テンポ良く飲み込まれることを警戒した。

安藤忠雄とヴィトンはなぜすごいか、クラブのママと理想の妻の関係、とんかつ屋でなくてデニーズに入ってしまうのはなぜか、独身貴族が高価な椅子に憧れる理由、そんなあたりが、なんとなく分かる。

文章も面白いし、ところどころにある図面と表が笑える。


マンガみたいだと思うけれど、建築家が書いたために、あとに続く人たちは、仕事の手間が増えて頭を抱えているんじゃないかと思う。
門外漢としては、もっともらしくうなづきながら、笑って楽しめばいい、ということにしている。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

建築って作っちゃったら後には引けないから、それこそ勢いと説得力がとても重要なんじゃないだろうか。
○○ビル第二版とか無理だもんね。

toyobe1984 さんのコメント...

改修もあるけども、たしかに、作っちゃったら、あとは良くも悪くも正当化するしかないもんねえ。
なんか失敗したとしても痕跡を消せないってのは、けっこう大変だろうけど、人にいい夢見せられる話術っていうのは、匠の技だよね。。