2010年2月20日土曜日

「出版業界最底辺日記」

「出版業界最底辺日記」
エロ漫画編集者「嫌われ者の記」
塩山芳明著、南陀楼綾繁編、ちくま文庫、2006年


久しぶりに新品の文庫本を買った。
ネットで買ったので、まだ誰も開いてないはず。
新品は、ページをめくる度にぴりぴりと頁の下の部分がはがれていって、良い音であると知った。

エロ漫画を雑誌にして出版することを生業とする編集者の、日常のあれこれが日記のかたちで書かれている。
予備知識がないのと登場人物が多いのとで、関係図がよく分からないが、どうも編集というのは印刷の会社と原稿を描く漫画家と、その間を行ったり来たりして、更には双方の仕事に対して監督責任があるらしい。激務だ。
文体がごちゃごちゃしていて読みにくいけれど、結局、全部読んでしまった。
現場の生臭い雰囲気がストレートに伝わる。
エロ漫画は「抜きどころ」を提供するのが主眼だろうけど、本書から、万事ただ脱げばよいというわけではないと分かった。
エロい本ではないですので期待の方向にご注意。

何が面白いかは編者が前書きに書いてあるので、特に気に入った一節を。

「新聞は『朝日新聞』、本は岩波新書で、雑誌は『文藝春秋』のアブノーマル一家の悪臭!! 
←本当は買ってるくせに、いつも駅で捨ててる、『週刊実話』も家に持ち帰れよ。
真っ当な一家になれるかも」

(p.171)



2010年2月18日木曜日

一浪一留

この前はじめて、見ず知らずの方から、このブログにコメントを頂戴した。
自分と同じ興味関心をもつ人がいるだけでも僥倖だが、それを伝えてくれたのがなんとも幸いだと思う。
ありがとうございます。


最近、アルバイトを探すために何枚かの履歴書を書いた。
履歴書に並べて書くと、なかなかの高学歴だった。
ただ、浪人して留年して就職先もないことを思えば、世間的にはうれしくない状況だろうと思う。
立身出世に熱心な旧友たちが僕の立場に置かれたら、すぐに胃を痛めるに違いない。

そういう観点から最近の交友関係をみると、どうも片寄って出世欲のない人間が集まりつつある。
特に、専門学校時代あたりからがそのような傾向が強い。
就業意欲が湧かないのは、大手に勤めたり銀行に勤めたり士業を目指したりという連中が身の回りに少ないおかげかもしれない。

卒業して3年フリーターしてから、そういえば建築がやりたいと言い出した建築科の同級生とか、田舎からの仕送りで儲からない学問ばかり考えながら独身貴族みたいに趣味にいそしむ同級生とか、ヨーロッパに留学して建築やったけど喫茶店のオーナーになってコックに毎朝食事を作らせるという同級生とか、小学生より長いこと大学生やってカラオケで一芸を身につけた同級生とか。

ここまで書いて気づいたけど、大学生始めてから8年間になる。学部生2回分だ。
こんなことなら、大学なんか入る前に音大を済ませておけば良かった。




本屋さんの平積みのコーナーを見るに、デキる人になりたいと多くの人が願っている。
それは真理だけど、「要するにかわいい女の子とデートしてうまいものを食べて楽しく生きたいと思っているだけである。」というのも真理だと思う。

「村上朝日堂」という村上春樹のエッセイに出てきた一節だ。
前に「うずまき猫」のエッセイの感想文をブログに書いたけど、「朝日堂」の方が今の僕には面白い。

「うずまき」と「朝日」の違いは、コンチネンタルブレックファーストと、みそ汁の関係に相似できると思う。
コンチネンタルブレックファーストは洒落て聞こえるけど、みそ汁のほうが自分の肌に合うという、分からない喩えだけど。
それで、みそ汁の方は、「日刊アルバイトニュース」という雑誌に連載していた文章らしいから、今の自分はまさに読者層の真ん中にいると考えられる。

今書いて気づいたけど、コンチネンタルブレックファーストってすごく長いカタカナだけど、「大陸朝食」なんだろうか。
こういう十把一絡げな表現はだいたい島国根性の悪意があるんじゃないかと邪推した。

村上春樹の若い頃は、学生結婚をしてアルバイトに打ち込んで奥さんの実家に居候して、企業に勤めても仕方ないから自分でカフェを開いて口を糊していたらしい。
ご本人もアルバイト情報誌の購買者層には親近感をもっていたと思う。

この二冊は、出世欲のない友人の1人が貸してくれた本だけど、その人はおそらくハルキ的な生き方を体現していくんだろうと思う。
後年なにか賞でも取って車でも楽器でも買ってくれないかと期待している。

骨のある連中に囲まれて、相変わらず、緊張感も闘争心もなく閑居している。

暇をしている状態が体臭となって人に伝わったのか、昔やってたサークルの、面識のない後輩が立て続けに伴奏のお誘いをくれた。
ピアノってどうしても1人で弾くことが多いから、合奏の誘いは、いつもらっても嬉しい。

2010年2月6日土曜日

土偶展

上野の国立博物館で「国宝土偶展」やってます。
土偶しかありませんけど、土偶がいいです。

お客さんがみんな和やかに見えました。
土偶と睨みあった成果だと思います。

イギリス帰りの展覧会だそうで、いつもより少しお洒落になっています。
ああ、さわってみたい、土偶。

元気がほしい時は、どうぞ。


東京国立博物館「土偶展」

2010年2月2日火曜日

飲食の嗜好

お酒といえば麦酒と考えていたのだけど、最近、ハイボールにハマっている。
炭酸の軽い口当たりも良い。
甘みがまた良い。
また、特に疲れている時などは、ビールのように苦みがないので、身体にスムーズに取り込まれる気がする。
小雪さんのイメージも、味に影響しているような気がする。
CMの効果は大きい。
ちなみに、おぎやはぎのお二方も出てるんですね。


お酒も好きだけど、甘いものもよく嗜む。
この前、たけのこの里を食べた。
サクサクした食感が、長年売れている秘訣の一つだと思う。
ただ、パッケージがかわいすぎて、男性諸兄はあまり縁がないのではないかと思う。

「Men'sたけのこの里」なんてものがあればなあと余計な心配をしながら、電車の中でついばんでみた。


ところで、ポッキーのウェブサイト、メンズポッキーのコーナーは何やら物憂いジャズが流れておりました。

「うずまき猫のみつけかた」

村上春樹、新潮文庫、平成十一年

 とくに早稲田の文学部生にとって、「村上春樹」は、たぶん建築の学生でいう「安藤忠雄」に近い。
軽々しく好きだというと、笑われそうだけど、ちゃんと読んでおかないと、また笑われる。
というと、もっともらしく聞こえる。
実際は知らない。


 友人が貸してくれたので、エッセイを読んでみました。
この本は、帯に書いてあったけど、「小確幸」を見つける毎日を、さらさらと書いたものと思う。
アメリカのボストンに住んでいる時の話が中心らしい。
文中にカタカナ語とヨコ文字の作家が多い。
例えば手持ちぶさたで、気のきいたものが読みたいときで、講談社学術文庫とか読みたくないときにちょうど良いと思う。


 個人的には、村上夫人による写真が、たいそういい。
大平正芳に似ている(誰だか分からなかったけど、かつての総理大臣らしい。)猫の写真が特にいい。
僕の交友関係で、猫好きが3人思い浮かんだ。
2人は熱狂的な愛好家で、1人はむっつりである。

 じつは、僕は猫とコミュニケーションがとれない。
自分が猫系の行動を取る(自分勝手な)せいで、それに付き合って遊んでくれる犬の方が僕には合うらしい。


 本の出版年はなんとなく西暦な気がしていたけど、新潮文庫は年号で書かれているのを初めて知った。