2010年3月19日金曜日

常磐線の鈍行

福島県の田村市に行って来た。

僕の所属する研究室がまちづくりで関わっている地域で、研究室からフェードアウトしている人間が意気込んで単身乗り込むのも妙なものではあったけれど、どうあれ、遠足は気分も晴れるし、なにより「打ち合わせ」という大義名分がある。

田村市は、郡山から鉄道で数十分、単線のディーゼル車が走る磐越東線の沿線にある。
新幹線をあわせて2時間程で東京へのアクセスがあり、2地域居住の取り組みも模索している。
たしかに、通勤費に目をつぶれば都内で働いても週末は田舎でのんびりという生活ができる立地。

今回は、切符代をけちって鈍行列車で行こうと思った。
自宅の最寄り駅から、五時間半で着くらしい。
さらに路線図を見ていたら、常磐線経由なら太平洋沿いを走ることが分かった。
海が見えるに違いない。
貧乏旅行はテーマが大事だと思う。


四時半の電車で上野駅に向かった。
朝方の上野駅のホームは、闇に包まれた静寂のうちにエスカレーターの自動アナウンスが無数に響き渡っている。
いい趣味していると思う。

水戸行きの常磐線に乗りこむ。
発車前の車内は、グリーン車の料金案内のアナウンスが爆音で流れている。
ホームに続いて、少し気分がぐったりした。
JRは放送案内が好きらしい。

それでも朝のがらりとした電車は、走り出すと快適だった。
四人掛けのボックスシートを独占して愛婆弁当を広げると、旅情もあって一人盛り上がる。

千葉を抜けると見晴らしも良い。
途中、恋瀬川という細い川が見える。
別になんともない川だけど、テンションが上がっているので字面を見て一人喜ぶ。
この辺で雲の合間から朝の日光が差し込む。
「天使の梯子」とか言うけど、もさっとした男子学生が喜んでも今ひとつかもしれない。

水戸の手前で、偕楽園の梅が少し見えた。
水戸駅の貨物ターミナルの手前の崖に洞窟のような穴があって、ドラクエを思い出す。

水戸で、「いわき行き」に乗り換える。
しばらくはベッドタウンが続く。
乗客は高校生か、日経新聞を手にしたサラリーマンが主で、雰囲気が大分変わる。
車両もボックスシートではなく、山手線のような平行配置の座席。

日立で企業戦士たちが降りると車窓の田園の眺めもあって再び旅情が高まる。
このあたりで念願の太平洋が見えた。
たっぷり眼前に広がるといった風ではないけれど、水平線やら浮かぶ船やらを垣間見ることができる。
東海道から見える海よりも、東北の方が何となく異国情緒があっていい。

常磐線は聞き慣れない名前の駅が多い。
「勿来」が特に気に入った。「なこそ」と読むらしい。
かつての国境とのこと。ひらがなの「いわき市」に吸収されるには、惜しい地名だと思う。

いわき駅で磐越東線に乗り換える。
立ち食いそばとか食べたかったけど、どこもターミナル駅はなんとなくよそよそしくて落ち着かない。
ディーゼル車は眠って過ごした。
途中、雪が舞った。

かりんとう饅頭を忘れずに買って帰ったけど、実家の家族に好評だったのは幸い。

前回の田村行きのブログから流れた時間を思う。

田村 その1
田村 その2
田村 その3

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